NPOシニアマイスターネットワーク(作古貞義理事長)は18日、第33回産学ジョイントセミナー「宿泊産業における景観・環境問題」をリソースインターナショナルの会議室で開いた。
講師は国際観光施設協会前会長の村尾成文氏。この中で同氏は「バブル期には85兆円近くに達していた建設投資は縮小して行かざるを得ない。欧米先進国並みにGDP比10%以下にまで縮むこともありうる」と指摘。
その上で「こうした成熟した先進国へのシフトの中で重要なものの1つに観光産業の確立がある。人々の喜びの充足を基本とする観光産業は、ハードの領域からソフトの領域にいたるまで幅広い領域を包含している産業。同時に、美しく豊かな自然や含蓄の深い歴史、魅力的な文化、生活環境を含めたものであり、欧米先進国では基幹産業の1つだ」と話し、国内産業成熟化の当然の帰結として観光産業の基幹産業化が実現するとの認識を示した。
宿泊施設ついては「旅館とホテルといった業態区分の固定化が失われるのに従って、共通の観光市場を対象にした業態間の競争は今後も激しくなってゆくことが予測される」などと話した。
さらに「日本では、近代化と共に移入された西洋起源のホテルと、伝統的な宿泊施設である旅館が、それぞれに独自の発展をしてきているが、宿泊収容能力がきっ抗するようになるに従って、この2業態は相互に影響を与えるようになってきている」と説明。
具体的には「旅館は大型になるに伴ってホテルの方式を様々な分野で取り入れ始めている。フロントカウンターの設置と上下足履き替えルールの変更、泊食分離化、部屋食の減少とレストラン化、客室プライバシーの確保とバスルームの設置、さらに客室に畳だけでなくベッドを設けることも少なくない。管理システムにも、ホテルで発達したシステムの導入が始まっていると聞く」「逆にホテルでは、和風客室を設けるのは以前から行われている。さらに旅館で培われたノウハウを導入する動きがある。例えば、客室の浴室の快適度をあげるとか、大浴場や露天風呂を設けるといった例も出てきているし、旅館のサービスを代表する女将や仲居のあり方を取り入れようとする例も出てきている」と解説した。
最後に「旅館とホテルの業態ミックスが進むのは当然のことであり、望ましいとも言える。訪日外国人のためのホテルと国内客のための旅館といった観念からの脱却はとっくに始まっている」と結んだ。